「労働安全衛生法」に基づく工場内騒音測定のポイント~第一管理区分を目指すために
こんにちは、ソリューション事業部です。今回は工場の騒音測定のポイントについてご紹介いたします。
一般的に騒音レベルはdB(デシベル)で数値化し騒音レベルの大小を確認しますが、dBの計算方法によって、規制値や基準が変わります。工場内部の騒音測定の方法は「労働安全衛生法」に基づいて行います。また、2023年より騒音障害防止に関するガイドラインが改正されました。一部の業界では騒音障害防止を含めた安全対策を推進しておりますが、元請から下請けに対しての安全推進・管理や、測定方法、健康診断分野でも新しい内容が追加されましたので、以下、追記をさせていただきます。
関連サイト
- 騒音障害防止のためのガイドライン改正について(厚生労働省/2023年4月20日)
- 騒音障害防止のためのガイドライン パンフレット(厚生労働省/2023年5月)
- 労働安全衛生法とは|(社) 安全衛生マネジメント協会
【2023年】騒音障害防止に関するガイドラインの新たな追加のポイント
①騒音障害防止対策の管理者の選任
管理者の定義は明確に決まっていませんが、衛生管理者、安全衛生推進者、ライン管理者、職長等になります。すでに担当者がいる場合は選定がスムーズかと思いますが、これから決めていく場合は、従業員・労働者の危険を防止し、安全管理・推進ができる部署・担当者が望ましいと思います。
②屋外作業場における個人ばく露測定の追加
これまでは屋内の著しい騒音を発生させる作業現場に限り騒音測定の実施(A測定、B測定)されてきましたが、屋外作業においては「定点測定」または「個人ばく露測定」を行います。定点測定は屋外で発生する騒音を10分以上測定、作業をする位置で測定しますが、「個人ばく露測定」は恐らく屋外での工事作業、木材伐採等の作業者保護を目的にしていると思います。ばく露計を 作業を行う時間帯(半日、終日)作業者の頭・首・肩に装着し、測定を行う と定められております。ばく露計 が落下して安全を阻害しないように注意をする必要があります。
③聴覚保護具の選定基準の明示
第2管理区分、第三管理区分等騒音発生現場において、従業員の聴覚保護のために耳栓やイヤーマフ等保護具の支給を義務付けられておりましたが、さらにJIS8161‐1に基づく聴覚保護具(旧防音保護具)の使用が規定されました。JIS8161-1は各聴覚保護具の遮音性能の測定方法になり、この基準を満たした聴覚保護具の選定が必要になります。極端に遮音性能が高いものは、人の声や危険信号が聞こえなくなる可能性があるため、職場による適切な選択が望まれます。
④聴覚検査の項目を追加
4,000Hz部分の聴覚検査の音圧が40dBから25dBに変更されました。また、雇入れ時または配置替え時や、定期健康診断(騒音)の二次検査での聴力検査に、6,000Hzの検査が追加されました。4,000Hz部分の音圧がより小さな音でも感知できるようになった点、また、2次検査では高音域の感知ができる点に重点を置いていることがわかります。これは私の経験上ですが、打ち抜きプレス機やエアブロー・エアー音、サンダー掛け等の作業現場・職場に従事していると、高音域部分が聞こえにくくなり、その点で検査でより従事者の健康を維持していく狙いがあるのだと思います。
⑤元請事業者の責務
建設現場等において、元方事業者は関係請負人が騒音障害のガイドラインで定めている事項を適切に実施出来るように指導・援助を行います。指導・援助の解釈は様々だと思いますが、一例として本ガイドラインの意味・説明、聴覚保護具の貸与・支給、使用工具などの低騒音化の推奨になります。建設現場の騒音は周囲住民環境等の配慮の視点で語られることが多いですが、従事する作業員の聴覚・安全の推進がより具体的に明示されたと思います。
工場内騒音測定ポイント
A測定(工場内を測定)
作業する場所の騒音レベルがほぼ均一な場所では、作業場の床面上に6m以下の等間隔で引いた縦線と横線との交点(5点以上)の床面1.2m〜1.5mの位置に騒音計を置き 、10分間の時間平均サウンドレベル(等価騒音レベル LAeq)を求めます。大型の機械が不規則・規則的に並んでいる場合に有効な測定方法です。測定後に大きな音が出ている箇所を特定し対策を行っていきます。
B測定(従業員のそばを測定)
音源に近接する場所において作業が行われる場合は、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間で作業が行われる位置に騒音計を置き 、10分間の時間平均サウンドレベル(等価騒音レベル LAeq)を求めます。特定した騒音源に対して対策を行う場合に適しています。
上記は騒音の平均値になりますが、適宜最大値(LAmax)も確認する必要があります。最大音が90dBで、最小音が70dBの機械であれば、10分間の平均値が規制値以下になりますが、従業員の方は90dBの音にさらされているという結果が出ます。
平均値は規制値以下ですが、実際には規制値以上の騒音が発生していることになります。計算方法で結果が変わってしまうのでややこしい点もありますが、一番は従業員の方への環境改善が目的ですので、しっかりとご確認いただく必要があります。
第一管理区分を目指すために最適な測定と対策
A・B測定で出てきた騒音レベルを騒音管理区分に当てはめていきます。
騒音レベルと管理区分の関係
- 85dB未満:第一管理区分
- 85~90dB未満:第二管理区分
- 90dB以上:第三管理区分
参考:作業環境の管理区分概要
- 第1管理区分:作業環境の継続的維持に努めること
- 第2管理区分:対応が必要です。場所を標識により明示すること。作業方法の改善等により管理区分Ⅰとなるよう努めること。必要に応じ保護具を使用すること。
- 第3管理区分:対応が必要です。場所を標識により明示し、及び保護具使用の掲示を行うこと。作業方法の改善等により管理区分Ⅰ又は管理区分Ⅱとなるようにすること。保護具を使用すること。
第2、第3管理区分では騒音現場として標識をかがげること、保護具(例えば耳栓やイヤーマフなど)を使用することを義務付けられております。また、第一管理区分を目指すことも定められております。騒音が発生することで、従業員の安全・健康が脅かされる可能性が高くなり、コミニケーションが取れないことにより、品質や生産管理の不備なども発生する恐れがあるためです。
A測定で複数台の設備・機器から騒音が発生する場合、対策が難しいようにも思えますが、騒音レベルは複数個所で発生することで合成値(騒音の足し算)が発生し、1台よりも騒音レベルが大きくなります。また、工場内・外で、騒音発生源周囲の壁・天井で音が反響し増幅するケースもあります。各現場の状況を把握しながら有効な対策を組み合わせることで、作業環境を改善することが可能です。
静科では、騒音レベル以外にも周波数測定や分析を行い、お客様に最適な測定と対策を提案させていただいております。現在工場の騒音対策にお悩みでしたら、騒音相談WEBツール・お電話にてご相談くださいませ。
関連ページ:音響測定(騒音調査等)