効果的な防音壁を設置するには~距離減衰と音の回折を理解する
こんにちは、製造部岩崎です。
ここ数年物価の高騰があり野菜なども高くなった印象でしたが、ここ最近のお米の高騰は目に余る勢いです。先日政府より備蓄米の放出の発表がありましたが、これで多少は値が下がるのでしょうか。一部では転売屋による影響などとも報じられていますが、情報に振り回されず、適正な量を適宜買うようにしたいと思います。
さて、本日は「効果的な防音壁を設置するために理解する必要がある音の性質」についてお話したいと思います。
防音壁設置にまつわる音の性質~距離減衰と音の回折
防音壁は文字通り音を防音するための壁ですが、むやみに設置するだけでは効果的な低減は得られません。有効な防音効果を出すためには音の性質を理解し、設置箇所や防音壁の材質、サイズを選定する必要があります。
防音壁を考える上で「距離減衰」と「音の回折」は特に重要な音の性質となります。
距離減衰
体感的にも分かるかとは思いますが、音源から距離が長くなるにつれて音のボリュームは小さくなります。
「音」は空気や固体などの媒体を伝搬する波なので、空気中の分子を振動させる際にエネルギーを消耗し音が減ります。この減少度合いをdB(デシベル)という単位で表したものが「距離減衰」です。
距離減衰を出すには対数を使った計算がひつようなのですが、おおざっぱに説明しますと、とある地点で騒音源の音を聞いている場合に、その距離から2倍離れた位置に移動すると騒音は6dB下がります。ちなみに3倍の距離で約10dB、10倍で約20dBの距離減衰です。
「防音ボックスを使うことで20dBの低減が得られました」という事例があった場合、それは10倍もの距離をとって聞いた場合と同等の防音効果が得られたということになります。(その他の外的要因を考慮しない場合)
音の回折
うえで述べたその他の外的要因の一つが回折音です。
一般的に防音壁は、外部と内部を行き来する音を防ぐために設けられています。防音壁を建てるとある程度の音が減少しますが、完璧に聞こえなくなる事はありません。例えば、高速道路を外側から見た時に、壁があるため中の車の様子は見えませんが走行音は塀の上を廻り込んで聞こえてきます。このような性質、現象を「音の回折」と呼びます。
一般的に、波長が短い(高音域)ほど音が廻り込みにくく、波長が長い(低音域)ほど音は廻り込み安い、という性質があります。つまり「ゴー」という低い音は防音壁で対処が難しく、「キーン」という高い音は、防音壁での対処がしやすいということです。
効果的に防音壁を使用するには
上記の2点の性質をふまえ、効果的に防音壁を設置する指針を簡単な例をもとにお話したいと思います。室外機の騒音を防音壁で下げることを想定し、条件は以下のようになると仮定します。
- 音源は室外機(1mの距離で75dB音が出ている)
- 測定点は敷地境界線上(土地と土地の境界を示す線)で、55dB以下まで音を低減したい
- 音源から敷地境界までの距離は3m
まず、音を下げたいポイントまでの距離減衰がどのくらいあるのかを考慮します。今回の例では75dBの音が出ているポイントから3倍の距離まで移動しますので、何もしない状態でも10dB程度の低減、つまり65dB程度まで下がることは見込むことができます。
次に考えるのが防音壁の設置位置と防音壁の高さです。上記の距離減衰だけでは条件である55dBはクリアできませんが、防音壁を適正な位置で設置することで更に音の低減が望めます。
防音壁が音源から遠すぎたり、防音壁の高さが低すぎると、音の回折の影響によって低減効果は落ちてしまいます。だからといって過剰な高さを用意するのはコストパフォーマンスの点で効果に見合わなくなる可能性もあります。
一般的に、1mくらいの高さの音源であれば2mくらいの高さの防音壁を音源から1~2mくらいの位置に設置することで10dB程度の低減が見込めます。今回の例で考えても、この条件で設置することで55dB以下はクリアできることが予想されます。もちろん様々な条件により適正値は変わってきますので、その際は都度ご相談して頂ければ幸いです。
下記のリンク先にて、防音壁のサイズや音源からの距離によってどのくらい音が変わるか簡易的なシミュレーションができますので参考にしてみてください。※シミュレーションでは周囲の影響や暗騒音は考慮しておらず、計算結果を保証するものではないことを予めご了承ください。
関連ページ:防音シミュレーション