騒音レベルの足し算の仕方~室外機2台の騒音レベルを例に計算
こんにちは。製造部の岩崎です。今回は「音(dB)の足し算」について書いてみたいと思います。
音の大きさを表す単位「dB(デシベル)」
音の大きさはdB(デシベル)という単位で表します。何デシベルがどのくらいの音を出すかの目安は、下記の過去記事にて確認できます。詳しくはリンク先に掲載していますが、静かな図書館が約40dB、救急車のサイレンが約80dBくらいのイメージです。
過去記事・生活音の目安をまとめ~音の大きさ・体感・騒音の具体例など
デシベルは単純な足し算ができない
先日、お客様よりこのような質問がございました。
「既存の室外機の横に新たに2台目の室外機を設置したいのですが、音はどれくらい大きくなりますか?」
デシベルは単純に足し算ができません。40dBと80dBの音があったとした場合、これを足し算する場合40dB+80db=120dBとはならないのです。詳しくは、数学のお話になってくるので省きますが、デシベルは対数(log)であるため、そのままでは足し算ができません。通常は、対数の計算が必要になってきます。
しかしながら、高校で習った数学のことなど、忘れてしまわれた方も多いと思いますし、何より対数の計算は面倒ですよね。そういった場合でも、簡易的な方法でデシベルの足し算を行う方法があります。
補正値を使って簡易的な計算が可能
対数の計算を行わなくても、簡単な法則を使うだけで、デシベルの足し算ができます。以下の3つの手順で計算ができます。
- 足したい2つ音の間の差(レベル差)を計算する
- 下記のデシベル和の補正値表を使い、レベル差から補正値がいくらになるか確認する
- 足したい2つの音のうち、大きい方のdB数と補正値を足し算する
※補正値表
これだけではイメージがしにくいと思いますので、具体的な例をもとに計算してみます。
例. それぞれ60dB , 63dBの音が出る室外機が2つある。これらのデシベル和を計算する。
- 2つの音の間の差(レベル差)は、63dB-60dB=3dB
- 補正値表を参照すると、レベル差3dBのときは、補正値2dB
- 2つの音のうち大きいのは63dBである。これに補正値を足す。63dB+2dB=65dB
よって、60dBと63dBのデシベル和は『65dB』になることがわかります。
これが例えば、50dBと70dBの2つの和となると差が10以上になるため、補正値は0となり、単純に大きい方のデシベル、70dBがデシベル和になります。室外機の音についてご質問を頂いたお客様にも、この方法を使用して、予測される数値をお答えすることができました。
このように簡単な方法で、デシベルの足し算を計算することができますので、ご興味のある方は、是非お試しください。
3台以上の機械の騒音レベルの足し算について(2024/7/17追記)
こちらの記事が比較的多くの方に閲覧して頂いているようなので、3台以上の機械の騒音レベルの足し算についても追記していきたいと思います。
まずはその方法について簡単に記載します。
(ⅰ) :足したい台数分の騒音値を低い順に並べる
(ⅱ) :上記の補正値を利用する方法で、音の小さい2台の足し算を行う。
(ⅲ) :(ⅱ)で得られた値と次に大きい値の足し算を行う。
(ⅳ) :足したい台数分が終わるまで3を繰り返す。
例によって、これだけだとイメージが付かないかと思いますので、具体的な例をもとに計算してみます。
例. それぞれ60dB, 64dB,73dB,63dBの音が出る4つの室外機がある。これらのデシベル和を計算する
(ⅰ): 足したい台数分の騒音値を低い順に並べる
60dB, 64dB,73dB,63dBを小さい順に並べて①60dB,②63dB,③64dB,④73dBとする。
(ⅱ) :上記の補正値を利用する方法で、音の小さい2台の足し算を行う。
①と②の足し算は上述のものと同じなので65dBとなる。
(ⅲ) :(ⅱ) で得られた値と次に大きい値の足し算を行う。
①と②を足したものと③を足し合わせる。65dBと64dBはレベル差が1なので、上記表より補正値は3となる。大きい方の65dBと3dBを足すと68dBとなる。
(ⅳ) :足したい台数分が終わるまで3を繰り返す。
①と②と③を足したもの(67dB)と④(73dB)の足し算を考える。67dBと73dBの差は6dBなので、上記の表より補正値は1dBとなる。大きい方の73dBと1dBを足して74dBが4台の合計となる。
これらの一連の流れを画像イメージにすると以下のようになります。
感のするどい方は気付いたかもしれませんが、騒音レベルの足し算は全体の中で1つだけ大きい音が存在するとその他の音の影響が小さくなる傾向があります。例えば今回の場合73dBだけ離れて大きい数値ですが、60dBや63dBや64dBを足したものを加えても1dBしか変化が起きません(73dB⇒74dB)。
逆に今回の足し算の中に④73dBがないと仮定した場合、①+②+③は68dBとなり、それぞれの数値の影響が大きいことがわかります。これらの影響は「マスキング効果」と呼ばれる事例に近いのですが、気になる方は下記の過去記事をご覧ください。
※過去記事:騒音対策にも影響を及ぼす「マスキング効果」~事前の騒音調査で状況を知る事が大切
今回は機械の音の足し算のやり方を例題を元にご紹介しましたが、弊社ホームページ上では騒音源に向かって防音壁を立てた場合の簡易的な騒音シミュレーションも行うことができますので、下記サイトよりご確認頂ければと思います。
※関連ページ:防音壁の騒音シミュレーション
※過去記事:静科ウェブサイト上にて簡易騒音シミュレーションツールを導入しました