Loading...

株式会社静科

ARTICLE

記事詳細

    2024-08-02

    音の伝わり方~音を伝える物質「媒質」の種類がポイント

    製造部の岩崎です。今回は音にまつわる知識ということで、「音の伝わり方」についてお話したいと思います。

    音の伝わり方

    音とは、物質中を振動(波)が伝わっていく現象です。振動は、物体の周りにある空気を押し出し、圧縮します。この圧縮された空気の濃い部分を、隣の空気がさらに押し出します。このように、順々に空気の濃い部分と薄い部分が発生し、それが波となって伝わる現象を「音」といい、圧力の変化の波のことを「音波」といいます。

    音を伝える物質(媒質)

    音を伝えるための架け橋となるのが「媒質」です。媒質には、気体、固体、液体などがあり、それぞれ音を伝える速さが異なります。例えば、空気中では音は約340m/sで進むのに対し、水中では約1500m/s、鉄ではなんと、約5000m/sの速さになります。

    音の伝わる速さには、密度と弾性率(物質の硬さ)が関係しており、軽くて硬い物質ほど、速いスピードで伝搬します。また、媒質がない状態では音は伝わらないため、宇宙などの「真空」で音が生じることはありません。

    空気伝搬音

    空気伝搬音とは、空気中を伝わって耳に届く音のことです。音源からの距離が離れるほど、音のレベルは弱くなり(距離減衰*)、壁などの遮蔽物により、ある程度遮断することができます。

    遮音壁や防音ボックスなどを利用することで、空気伝搬による音を低減することが可能です。弊社で承っている騒音問題の大半が、この空気伝搬音によるものです。

    *距離減衰について

    一般に、音源から距離が長くなるにつれて音のボリュームは小さくなります。音というのは空気や固体などの媒体を伝搬する波です。空気中などの分子を振動させる際にエネルギーを消耗し、結果、音が減るというわけです。この減少の度合いをdB(デシベル)という単位で表したものが「距離減衰」です。

    音が点音源だと仮定した場合、音源からある一定の距離離れた地点と比べ、その距離の2倍離れた地点での騒音は6dB下がります。ちなみに3倍の距離で約10dB、10倍で約20dBの距離減衰が得られます。

    つまり、「とある防音ボックスで20dBの低減が得られました」といった場合、それは10倍もの距離をとって聞いた場合と似た防音効果になるということです(回折音など、距離減衰以外の要素を考慮しない場合)。

    固体伝搬音

    床や壁、天井などを振動や衝撃が伝わって聞こえる音です。固体は気体や液体よりも密度が高いため、音が伝わりやすい特徴があります。マンションなどで最も苦情が多いものの一つが、上下階の音、つまり、固体伝搬音である、床衝撃音に関するトラブルです。

    固体伝搬音を防ぐ為には、一般的に防振ゴムなどの、防振材による振動緩和などが行われますが、空気伝搬に比べ対処が難しく、100%の防音は難しいのが現状です。

    液体伝搬音

    空気や固体同様、液体中も音は伝わります。密度は気体の方が液体より小さいですが、弾性率は気体より液体の方が非常に大きくなっているため、空気の4~5倍のスピードで音は伝わります。実際に水中でしゃべろうとすると、なかなかうまくできないため、水中で音の速さを体感することは、難しいかもしれません。

    音の伝搬方法の違いによる騒音の対策方法について(2024/8/2追記)

    「空気伝搬音」「固体伝搬音」について、それぞれの音によって騒音対策が変わってきます。上記の説明では簡単に対策方法について触れておりますが、少し踏み込んで事例とともに有効な対策方法をご紹介したいと思います。

    ※残念ながら「液体伝搬音」における騒音の対策(水中の音対策)については世間的に需要と供給が薄く、弊社でもまだ対策事例がない種類の音ですが、今後の課題として取り組んで参りたいと思います

    空気伝搬音の騒音対策

    上記の通り、距離減衰による音の軽減や遮蔽物による低減が有効です。

    特に吸音性のある防音カバーで対象物を囲う方法が最も有効な手段となります。下記の記事は3Dプリンターを防音ボックスで囲うことで騒音対策をした事例ですが、対策前と対策後で約25dBの低減が得られております。

    ※過去記事「3Dプリンターの騒音対策~動作確認が可能な窓付き防音ボックスで対応

    吸音性のない防音材でもそれなりの効果が得られますが、内部で音が反響して増幅する可能性があるのでおすすめできません。

    また、設置環境的に対象物を完全に囲うことが出来ない場合でも、防音壁や吸音パーティションで1面を遮断するだけでもそれなりの防音効果が得られます。下記の記事では食品工場の室外機の前に防音壁を設置した事例をご紹介しており、対策前と対策後で約15dBの低減が得られております。

    ※過去記事「食品製造会社様の室外機防音対策事例@千葉県

    10dB音が下がると体感で約半分、20dBで4分の1と言われておりますので、これらの対策では十分な防音効果が得られている事が分かります。

    固体伝搬音の騒音対策

    上でも触れたように、空気伝搬音に比べて対策が難しい固体伝搬音ですが、適切な素材や手段を利用すればある程度の騒音低減が可能です。

    下記の事例は、工場が併設されたビル内の床振動音対策をした事例になります。

    ※過去記事「工場兼事務所ビルの床振動音対策~縁切りのために音シャットフレームを使用

    下階の機械振動音が、事務所がある上階に伝わってしまっているために対策が必要な案件でした。振動音は空気伝搬音とは異なり壁や天井や床を伝っていきますので、対策のためには躯体と仕上げ面の縁を切る「浮き構造」を導入するのが効果的です。

    この事例では「音シャットフレーム」という躯体の縁切りが可能となる製品を使い浮き構造を作ったうえで、吸音材を間に敷き詰めることで空気伝搬音も同時に軽減する、という構造を取り入れております。

    このように、振動音対策を本格的に行うと床下まで含めた大がかりな施工になるケースが多いですが、「一人静Grand」のような制振材を使う事でもう少し簡易的に行う方法もあります。例えばご家庭の洗濯機は比較的身近な振動音を発する機械ですが、制振材を下に敷く事で多少音を軽減する事ができます。

    騒音問題を解決します!弊社までお気軽にご相談ください

    今回は「音の伝わり方」についてご紹介させていただきました。弊社は、工場内の機械音や、室外機など、空気伝搬音に関する騒音対策を始め、マンションやオフィスの床振動など、固体伝搬音による騒音対策など、様々な騒音問題の解決を得意としております。騒音対策・防音工事のご相談は、騒音相談WEBツールより、ご気軽にお問い合わせください。